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リモートワークの環境でチーム文化を構築する

実際に顔を合わせて気さくなやり取りができない環境で、スタッフ同士が親睦を深めるにはどうしたらいいでしょうか。

まもなく2022年。パンデミックがはじまり、完全にリモートで仕事をするようになって2年目が経過しようとしています。リモートワークという新しい暮らしの中で、締切日を守りながら納品を続けるための新しい方法を私たちは確立してきました。同時に、オフィスで慣れ親しんだ人たちの笑顔を見たり、チームメンバーとスナックやコーヒーを楽しんだり、ランチに一緒に行ったりできる日常は失われてしまいました。そして、その失われた「大切な何か」に共鳴するように、多くの人々が同じ課題に頭を悩ませています。それは、「どのようにチーム文化をつくりあげるか?」ということ。

チーム文化を構築してスタッフ同士の親睦を深めるのは、かんたんなことだと思われがちです。それは、単に顔を合わせていれば自然に育くまれていくことが多いからです。しかし実際に顔を合わすことができず、チーム文化が失われてしまえば、スタッフ同士の思いやりや共感もなくなってしまいます。支え合ったり、意見交換をしたり、つらいときに慰め合ったり、仕事以外で会ったり。コンピューターの画面を通した動画チャットでは、こういったサポートを必要としているというサインを発することも受け取ることもできません。特にデザインやクリエイティブ関連の職に就いている人にとって、この状況はさらに困難を極めます。この業界では、誰もが自分の仕事について常にさまざまな批評を受けながら、互いにアイディアを生み出す努力をしています。お互いに励まし合ったり、一緒にかんたんなブレインストーミングを行ったりすることで、直感的なひらめきにつながるのです。

オフィスで慣れ親しんだ人たちの笑顔を見られる日常は失われてしまいました。

ロボットのように感情を一切持たないスタッフがいたとすれば、以前の日常が失われてしまったとしても、大した問題ではないと気にもかけないかもしれません。チームは目標を達成しているし、成功指標は右肩上がり。ですが、こういった目標を達成できるのは、チーム全体の満足度が高く、お互いの協力体制も万全で、意見交換しやすい雰囲気があり、お互いに対する信頼にあふれ、誰もが成功できることを願っているからこそなのです。朝起きてやる気満々で仕事をして、人事異動や増員で新人を雇うのに勤務時間の大半を費やすこともなくなります。チーム内で絆を感じることができれば、仕事が仕事のようではなくなり、純粋にやりたいから仕事をするようになります。

リモートワークに合わせたプロセスの確立

チーム文化を構築するために私のチームで行った取り組みについてご紹介する前に、まずは私自身について少しお話しさせてください。今回は親睦の深め方や思いやりがテーマですので、まずこのブログをご覧の皆さんと「つながり」を持てた方がいいはずです。私がSquareのデザインチームのリードを務めるようになって5年以上になります。最初の2年間はサンフランシスコのオフィスに勤務し、その後ミルウォーキーに引っ越してから完全にリモートワークに移行しました。ミルウォーキーへの引っ越しは、パンデミックの約1年前のことで、当時はリモートで働くデザイナーは少なく、デザインマネージャーとなるとさらに少数派でした。すぐに新しい仕事環境に慣れるために、試行錯誤を繰り返しました。デザインチームの作業状況を把握するにはどうしたらいいか?同じ部屋で壁や画面を指したりできなくても、デザインのレビューやブレインストーミングを行えるのか?面接はどのように行ったらいいか?お客さまが期待する一流の体験をお届けするためには、ビジネスにおいて大切なこういった課題をクリアしなければなりません。実は、このような課題は思ったよりもスムーズに解決することができました。なぜなら、新しい環境に合わせるためのプロセスの変化として必要不可欠なものだったからです。しかし、かんたんに解決できない問題もありました。スタッフと同じ室内にいない状態のままでも、健全で楽しく、思いやりあふれるインクルーシブなチーム文化を、どうしたら構築できるのか、という点です。リモートワークでは、気軽なおしゃべりで冗談を言ったり、ランチに連れて行ったり、(動画ミーティングや1:1の前後などで義務的に行うのではなく)普通の日々の会話をしたり、ということができないからです。

初めてリモートワークを始めたとき、私は「変わった人」として完全に孤立していました。オフィスのミーティングの際、皆は会議室に集まっているのに、私だけはいつも画面の中。当然のことながら、ミーティングの前後にスタッフ間で交わされたちょっとした会話にも参加することはできません。これを解決するため、私はやや強引なアプローチを取りました。月に1回サンフランシスコやニューヨークに出張して、スタッフと実際に顔を合わせ、信頼関係の構築に努めました。いつも画面を通してミーティングに参加していて、スタッフの作業を今後評価することになる担当者の「人となり」を、スタッフに実際に知ってもらいたかったのです。

ハングアウトやFigmaなどを利用して親睦を深める

そして世界中でパンデミックが発生。良くも悪くも、私だけでなく誰もがリモートワークしなければならない状態になりました。誰に会うにも、画面を通してのやりとりが欠かせなくなりました。飛行機に乗って実際にスタッフに会いに行くことはもうできません。リモートワークへの適応やチーム文化の構築という問題は、もはや私だけではなく、チーム全体に影響を与えるものへと発展しました。しかもスタッフの多くが独身で一人暮らしをしている、または友人や家族にも会えないという状態です。そんな彼らが主に社会的なつながりを持っていたのは、仕事の同僚です。なかには、仕事以外にすることはないというスタッフもいました。そのとき私は確信しました。これまで以上に私たちはお互いの存在を必要としている。たとえスタッフ全員がリモートワークの状態でも、チーム文化を構築して親睦を深められる方法を何としても見つけなければならないと。「楽しむこと」を強制することなく、自然に仲間意識を生み出すにはどうしたらいいのでしょうか?

Example of our design weekly file

デザインチームのウィークリーファイルの例

まずは、毎週行っているデザインチームのミーティングを、少し変えてみることから始めました。これまでこのミーティングでは、作業状況の報告を中心に行い、スタッフの個人的な側面に注目することは、あまりありませんでした。この方針を変え、ミーティングではお互いをよりよく知ることを目的として、作業に関する報告はあまりしないようにしました。またデザイナーとしての知識を利用して、プロセスの改善に役立つツールを活用しました。たとえば、Figmaでスタッフ向けにテンプレートを作成し、前の週に取り組んだ作業内容、現在進行中の作業内容、自分の作業量、聞いている音楽、視聴している動画、週末の楽しかったことなど、スタッフに関する情報をお互いに共有しています。ミーティングの最初の5分間は、ファイルに対するコメントや意見交換をしています。

デザインチームのウィークリーミーティングでスタッフが共有している「楽しいこと」の例

次の10分間で、私が思いついたグループに関するトピック、またはほかの人が提案したトピックについて話し合ってもらいます。このとき特に心掛けたいのは、スタッフそれぞれが個人的に思っていることを共有してもらうことです。最後の15分は、各スタッフの普段の暮らしや、楽しかったバケーションの思い出、自宅の紹介など、ほかのスタッフのアイデアを刺激するような内容をプレゼンテーションしてもらいます。面白いことに、この企画は大人気で、お互いに親睦を深めることができました。さまざまな面白い趣味(スピードキュービング、陶芸、絵画、音楽など)や、バラエティーに富んだ生い立ち(農場育ち、親が軍人で引っ越しが多かった、家族の友人に有名人がいる)を知ることができました。そして中には、個人的に抱えている問題を打ち明けてくれるスタッフもいるほどでした。

チームと共有したさまざまな個人的体験の例

仕事から離れた時間を一緒に過ごす

毎週行うデザインチームのミーティングのほかにも、皆のスケジュールを合わせて、仕事以外でも一緒に何かを楽しめる時間を確保できるよう努めています。たとえば、四半期に1回、社内ゲーム大会や、雑学クイズ大会、そのほか準備が必要ないかんたんなイベントを企画しています。とても楽しくスタッフから好評だったイベントをいくつかご紹介すると、Figmaでの脱出ゲームや、ジャックボックスゲームAmong Usなどがあり、ボディボードをしに海に出かけたこともありました。

また年に1回公式の「オフ会」を開いて、仕事から離れて、じっくり時間をかけて何か楽しいことを体験できるよう企画しています。たとえば、メニューの品を決め合う特別ランチ会を開催したり、料理やタイダイ染めなどの教室を一緒に受講したり、Airbnbを一緒に活用したりなど、さまざまなイベントを企画してスタッフ皆で楽しんでいます。

毎年の恒例行事となった、Figmaで行うプレゼント交換会

そのほかにも、年末や、スタッフの誕生日、新入社員歓迎会など、機会があるごとにイベントを行っています。特に人気が高いのが、Figmaを使って行う「ホワイトエレファント」というプレゼント交換会です。まずスタッフ全員がプレゼントを1つずつ用意して、ラッピングペーパー風の画像レイヤーでプレゼントの画像を隠します。プレゼントを皆で選ぶときは、指定のプレゼントエリアにプレゼントを移動してラッピングペーパー画像レイヤーを取り、中身を紹介します。その後、各スタッフが希望するギフトをめぐってはげしい争奪戦を繰り広げた後、それぞれのプレゼントの所有者が決まったら、プレゼントを用意した人が受取人宛てに直接発送するというシステムです。これは対面でプレゼント交換をするより断然面白かったので、毎年の恒例行事にしようと思っています。

リモートチームのリーダーとして成功するのに必要な資質を備えていれば、どんなチームでも優秀なリーダーとして成功できるはずです。

やはり、チーム文化を構築するために、実際に顔を合わせてお互いのことを自然に学んでいくというプロセスよりも本当の意味で優れた方法は存在しませんし、誰もがまた同じ空間で一緒に作業できる日が来ることを心待ちにしています。その一方で、このリモートの世界では、大きな視野を持ちながらよりインクルーシブに物事を考えられる新しい方法も確立されてきました。チームの輪を広げるためのプロセスを作成して、これまで以上に大きな規模でさまざまな人々と知り合えるようになりました。パンデミックが始まったころ、リモートワークという環境でリーダシップを発揮する方法について多くの人からアドバイスを求められました。最終的に私は一つの結論に至りました。それは、リモートチームのリーダーとして成功するのに必要な資質を備えていれば、どんなチームでも優秀なリーダーとして成功できるはずだということ。透明性を徹底したプロセスを確立することをはじめ、どんなときでも連携作業できるよう推進したり、スタッフ誰もが安心でき、互いに支え合える環境を創出したりできる資質が求められています。いずれ全員がオフィスに戻って作業できる日常が戻ってきた場合でも、リモートワークを通して新しいプロセスを確立したことで、今後の働き方改善にも活かせるはずです。