建築では、コンクリートや鋼などのさなまざまな建材を扱うことが一般的です。これらの建材こそが、最終的な製品であるビルや建造物を作るために建築士が使用するものです。同様にプロダクトデザイナーも、タイポグラフィ要素、イコノグラフィ、色などのさまざまな素材を扱います。特に金融サービス商品をデザインするときに用いる、最も重要な素材は機能フローです。
機能フローとは、商品エリアで行うフォーカルジョブを解決するためのアクション指向的なパスのことです。機能フローに取り組む際、UXフローは多くの場合、直線的ですが、状況が変われば複雑になり、必然的にそのデザインの意味が変わります。機能フローにおける優れたデザインとは、ユーザーのフォーカルパス、そのフロー内のマイクロアクション、そしてそれらが行われる多様な状況との間の複雑な関係をシンプルにすることなのだと私は学んでいます。
フォーカルパスとマイクロフロー
フォーカルパスは、ユーザーを特定の目標に集中させフローに沿って導くように設計します。たとえば、ブラウザ決済のお会計フローは、パソコンから支払いをすばやく受け付ける際に役立つ機能パスです。商品の購入者に効率よく課金するフォーカルパスを組み込みますが、加盟店さまの状況によっては別のマイクロフローに分岐します。たとえば、特定の状況で新規顧客や新規商品を作成したいといった場合です。そのフローで異なるアクションを行えば、異なるマイクロフローへと導かれます。
機能フローの価値は、どういった要素で構成されるかではなく、そのフローのあらゆるステップで何が使用され何が役立つかで決まります。ですから、デザインを調査する際、どのマイクロフローが加盟店さまにより高い価値をもたらすかを把握することが重要です。なぜならそれが、デザインアフォーダンスのヒエラルキーを作るのに役立つからです。これにより、新機能を見つけやすいフローを構築することもできるので、「とかく新機能はユーザーが見つけにくい」という問題を緩和することもできます。
スムーズなインタラクションとマイクロアクション
機能フローが素材だとすれば、デザイナーとユーザーの両者によりデザインされる成果物はインタラクションです。なぜなら状況に大きく左右されるからです。
機能フローにおいてデザインが優れていれば、マイクロフロー間で流れるようなシームレスなエンドツーエンドのインタラクションが促進されます。
一方でマイクロフローは、ユーザーが特定の目標を達成するために行う意図的な一連のアクションを促します。機能フローが一貫した体験となるようデザインする上で、私はユーザーのマイクロアクションの間の摩擦を減らす方法についてより深く考えるようになりました。フローに沿ったスムーズな進行を重視することでユーザー体験が改善し、状況の切り替えや摩擦が軽減されます。結果としてインターフェイスがすっきりしましたので、機能フローを介してよりスムーズに操作できるようになっています。
インタラクションのスムーズさに関するもう1つの重要なポイントは、インタラクションのパターンにおける一貫性です。たとえばシステムの一貫性を保つ場合は、ビジュアル要素と機能的インタラクションモデルが、目に見えるあらゆる領域で同じように動作するようにします。加盟店さまは、インターフェイスの動作からこれまでと同様の進め方だろうと予測できるので、新機能を使いこなしやすくなります。機能フローもタッチポイントも異なる中で、顧客作成のパターンが繰り返されている場合は、同じようなタイポグラフィヒエラルキー、インタラクション動作、およびボタンコピーを用いる必要があります。そうすれば異なるタッチポイントであってもその都度、加盟店さまは新規顧客を作成する方法をすぐに把握して、それぞれの状況に対応できます。
状況の複雑さによる代償
機能フローにおけるマイクロアクションを組み込むと、複雑になってしまいがちです。しかしその一方で、マイクロアクションはデザイン要素に対してさまざまな種類のユーザーインタラクションを発生させます。また他方では、技術的に広範なエッジケースやアクセス権限関連の問題の要因ともなります。こういった事例の1つとして、お会計に追加するお客さまを検索して絞り込んでいくプロセスが挙げられます。これは購入者の情報を効率的に読み込むためのマイクロフローですが、加盟店さまにこのような操作を防止する制限が追加されている場合は、ソフトウェアが複雑になるという代償が発生します。複数のユーザーに対して新しいインタラクションを組み合わせると、最終的にソフトウェアへのアクセスが不可能になったり使いにくくなったりするのです。
アクセシブルなインタラクションのためには、シンプル化がカギを握ります。優れたシンプル化プロセスを確立するには、正しく質問する必要があると私は学びました。エンジニアリングチームにとって、機能フローに新しいデザイン要素を追加するのはどんなに大変だろうと私たちは何度も考えました。また、マイクロフローにデザイン要素を組み込むと、ユーザー体験がどれだけ複雑になるか考えてみるのもいいでしょう。決定事項をユーザーのニーズに直接結びつけることで、ユーザー体験をより良くシンプル化でき、最終的によりアクセシブルな金融ツールを提供できるようになるのです。